…朝、宿六が外を見て、「すごいきれいなところだよ!」と起こしにきましたが、私は目も開けられず。
ほんとうは今朝は、アランブラの水に関する、おもしろそうなツアーを予約済みです。 ふつう入れない水路なども見せてもらえるそうで、実に惜しいのですが、移動に明け暮れたきのうの今日ではちょっと無理。ざんねん。
昼すぎにやっと起きると、なるほど、たしかにきれいなところです。
アパルタメントの真向かいがアランブラ大宮殿で、左にはヘネラリフェの離宮がちらっと見え、右手にはグラナダ新市街とvega(グラナダの沃野)の緑までが見渡せます。
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アパルタメントの洗濯場からの眺め。 家事もこんなところですれば、けっこう楽しいでしょうね。まあ越して1,2ヶ月は魔力がもつかな〜? テラスのすぐ左が、私たちが一週間借りた部屋です。
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アランブラの塔のまわりを、たくさんのツバメが飛び交っています。 アーヴィングの『アランブラ物語』に出てくる、塔の上からツバメを釣る、というのどかな話を思い出しました。
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遅い昼食を求めて、サクロモンテの坂道をぶらぶら。 部屋の中はひやっとしていましたが、外は暑い!です。
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きょうはあまり食を追及する気になれず、そのへんのお店で小魚フライ。可もなく不可もなし。 でも、アランブラがあるサビーカの丘を眺めながら、だったらなんでもおいしいです。
店の十歳くらいの男の子が、レストランのすみに座り、赤ワイン(水で薄めた形跡なし)を飲んで真赤な顔になり、それでも宿題をやろうとしていました。 その年から鍛えるのか〜
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スペインに来ると、とりあえず食べたくなる fresa con natilla 単なる生クリームと苺で、とりたてておいしいわけではないのだけど、なんだかスペイン語の響きが良いので注文してみたくなります。
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マラケシュにくらべると、ぐっと毛並みのよい猫さん。
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暑いサクロモンテを、もう少しぷらぷら。
向かいのDarro川の小さな谷は、緑でいっぱい、小鳥も多く、じつに良いところですね、暑いけど。 27年前はツアーでグラナダを走り抜けたのみ、いかになにも見ていなかったか、ということが今回はよくわかります。
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近所のお店で朝のための食品を買いこみ、宿の冷蔵庫を満たして、一安心。 主婦の習性かな、いやですね。
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しんどいけれど、アランブラまでチケットの受け取りに。 夕方5時を過ぎても真昼の明るさ、いくら寝坊しても一日が長いのはありがたいです。
つねに人気のアランブラ宮殿入場チケットは、何ヶ月も前にネットで購入しておく必要があります。 私は大張り切りでたくさん買っておいたので、「四回分の入場チケット×二人分!」と言って、カウンターのおじさんに呆れられました。 今はよい季節なので、数週間先まで完全に売り切れだとか、「そんなに何度も見たいなら、予約しておいてよかったですね」とのこと。
ネットで購入済みのチケットは、左の黄色い機械でプリントすることもできます。 時代は変わりましたねえ。
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ヘネラリフェ離宮の夜間見学チケットをにぎりしめ、夜10時、ふたたびアランブラへ。 あたりはやっと暗くなり始めたところです。
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ヨーロッパの夏の夕空の、納戸色に染まって暮れなずむこの感じ、大好きです。 ああ私はやっぱり本当は、スペインに住みたいのではないだろうか。
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ヘネラリフェ離宮の手前には、1930年代以降に作られた新しい庭があります。 糸杉でふちどられた迷路のような作りで、ここもなかなか風情がありますよね。
やはり庭に、噴泉はひとつほしい… 糸杉の迷路も憧れますが、リマだとムシがつきやすく、手入れがけっこうたいへんらしいです。
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離宮の入り口では、生垣のように仕立てたジャスミンが満開。 ジャスミンは夜のほうがよく香りますから、これはもうすばらしすぎる効果!
気持ちとしては、マラケシュで買ったぺらぺらしたジャバドール(パジャマ風の上下セットになった、刺繍入りの民族衣装)でも着てさまよいたいところですが、あちこちにひかれた水とタイルの相乗効果でたいへん寒く、コートを持ってきてちょうどよかったです。
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Patio de la Acequia(日本語でなんと呼びならわされているかわからないので、スペイン語表記にしておきます)に入ると、あの忘れがたい、さーーーーっという涼しい水音が… 夜の静けさの中では、こんなに大きな音だったかと驚くほどです。
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見学者はぽつりぽつり、という程度で、たいへん静かです。 RodrigoのJunto al Generalifeを頭の中で再生しながら、名高い噴水のまわりをゆっくり歩きます
できれば時間いっぱいまでここにいたかったのですが、身体がどんどん冷えていきます。 暑い時期のスペインでこの寒さなら、リマの家の中庭に噴水、というのはありえない(肺炎になる)、とわかりました…
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砂漠で見たのと同じ蛙に会いました。 同種でもずいぶん運命が違いますね。
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石膏細工のすかし模様やアーチの向こうに見えるのが、黒い夜空なので、昼とはだいぶ趣がちがいます。 アランブラ宮殿に暮らしたアーヴィングが味わった贅沢を、ほんのちょっと追体験。
かつてイスラム式に床に座る暮らしをしていた人々が、座ったまま景色を楽しめるように、こうして窓が床ぎりぎりまで切ってあるそうです。 人気がないのをいいことにちょっと私も座ってみましたが、寒くてとてもじっとしていられません。
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離宮を見たあと、しばらく新しい庭で過ごしました。
隣接の野外劇場では、6月下旬から始まるグラナダ音楽祭の準備が進められています。 いつか音楽祭のときにも来てみたいな、でも昼の暑さがたいへんかな。
きょう会った年配のタクシー運転手さんは、 「もう命がもたないので、真夏の昼の数時間は、極力仕事に出ないようにしています」 …と、初夏の今すでに、息も絶えだえの様子で話していました。
真夏のグラナダは、軽く40℃くらいにはなるそうです。
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夜11時すぎ、アランブラの入り口の、だれもいない糸杉並木を静かに歩いて帰ります。 こんな静まり返ったアランブラ見学は、あとにもさきにもなかった、ということになりそうです。
この晩は、古い壁に囲まれた庭園を、いつまでも歩きまわる夢を見ました。
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今朝も極上のお天気です。 本日は宿から一歩も出ないで、しっかり休むことに決めました。
植木鉢は邪魔なので、床におろしました。 ここからだと、カルロス五世の無骨な宮殿がほとんど見えないのが、とてもいいです。
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アランブラ宮殿の一角で、さかんにフラッシュが光ります。 Torre de ComaresとTorre del Peinadorのあいだの柱廊のようです。
ひっきりなしに新しい観光客がやってきては、ぱちぱち写真を撮っていきます。 たぶんアルバイシンとサクロモンテがきれいに見渡せるのでしょう。
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昼すぎ、宿六だけは近所を少し散歩して、このレストランへ。
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そして、こんなのを食べてきたそうです。いいわね〜 (レモンがちょっとカビてるのも、日本だったらいやだけど、スペインやペルーでならぜんぜんオッケー) 量が多くて残したそうですが、なら持ってきてくれればいいのに。
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リマを出発する朝、わずかな時間ながら再々々々…会を果たしたPacollamaさんが、あんぱんといっしょにわざわざ手荷物で持ってきて下さったのが、堀田善衞さんの1977・78年のグラナダ滞在記、『スペイン430日』です。
旅行のしたくをしているとき、急に読みたくなってお願いしたのですが、昔はどこの本屋にでもあったこの本、今では古書でしか手に入らないのはちょっとショックでした。
本のなかみは、堀田善衞によるスペイン日記ブログ、といったところで、こういう味のある人のグラナダ暮らしを、グラナダの地で読み返すことができるのは、たいへんな贅沢です。Pacollamaさんどうもありがとう!
最初に読んだ二十歳ごろには、「堀田善衞のグラナダ生活」ときたら、もうあこがれもあこがれで… いつかこんなふうに、どこか外国に住んでものを書いたり(私の場合描いたり)するような人になりたいと、うらやましく思っておりました。
当時はほんとに、神様のように思えた著者ですが、今読み返すと、意外にスペイン語をかわいくカン違いしているところがあったり、また奥さんのことをさかんに書いているのもおもしろく、少しだけ身近な人になったような気がします。(こちらが年齢的に近づいてきている、というのもある…)
グラナダでの住所も載っており、またお気に入りだったらしい「クニーニ」という海鮮料理店が何度も出てきて気になるので、さっそく宿六に調査を命じておきました。
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堀田善衞さんはアランブラの塔のひとつ、Torre de Velaに、赤と黄のスペイン国旗(というかカスティーリャ旗)しかはためいていないのを不満に思っておられるようでしたが、今はちゃんと緑と白のアンダルシア旗もいっしょに掲げられています。
奥の青いのはEU、いちばん手前の緑と赤のはグラナダ市の旗のようです。 どこからも苦情が来ないように、とりあえずありったけ掲げておいた、という感じですね。
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日曜だからでしょうか、きょうは終日さかんに教会の鐘が鳴ります。 (録画したのをのせてみました、よろしかったらお聞きください↑)
ツバメや黄と白の蝶や、名前を知らない小鳥が、ひっきりなしに窓を横切ります。 鐘の音にも負けない、鮮やかな小鳥の声は、ナイチンゲールでしょうか。
無数の鐘が嫋々と鳴りつづけるのに似た、アリシア・デ・ラローチャが弾く『イベリア組曲』が、耳の奥でず〜っと響いているかのような、すばらしい午後です。
人生のさいごは、鐘の音がきこえるところで暮らしたいのですが、その夢が叶うときは果たして来るでしょうか。
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乾いた風がさらさら吹いて、部屋の中は少しひんやり感じるほどです。 雲ひとつない快晴で、気温26℃、湿度39%。 天国、といいたいところですが、私にはもうちょっと湿気があったほうがいいな。
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午後7時を過ぎ、やっと影が長くなってきました。
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午後8時40分。肌寒くなって窓を半分閉めます。 アランブラもいっとき人気が途絶えます。 10時になるとまた見物人が入り、フラッシュがぴかぴか光り始めるのですが。
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午後9時20分。
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9時半ごろ、アランブラの照明がぽっと灯ります。
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このアパルタメントでは、洗濯物は無料で洗って水切りし、籠に入れたのを部屋の外に置いていってくれます。 そこで夜遅く、こんな夜景を見ながら洗濯干しです。 サクロモンテで洗濯を干す、というのもなかなかの経験です。
洗濯ばさみは、どれも強烈な日光で劣化していて、さわるだけで粉々にこわれてしまいます。 宿の人はコツを知ってるらしいのですが、私はありったけこわしてしまいました、ごめんなさい。
(翌日乾いた衣類を取り込むと、ジーンズなんかはだいぶ色が薄くなっていました!グラナダの日光おそるべし!)
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夜10時。 宿六がネットでグラナダの和食店を調べ、Darro川の橋のたもとまで買いに行きました。
マグロを頼んだのに鮭ばかり(サンパウロのおすしみたい)、お米もざらざらしていますが、それでも心底ほっとする自分が情けないです。三十代まではこんなことなかったのに。
お寿司勝負ではリマの圧勝ですが、アランブラの夜景つきなので、これはこれで格別です。
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あまり散らかす前に、借りた部屋のご紹介を。 45平方メートルの、あっさりした内装のアパルタメントです。 明かりは蛍光灯(例の憂鬱な節約電球…)だったので、オーナーにことわって白熱電球にかえました。
同じ敷地内に、サクロモンテならではの洞窟の部屋もあります。 それも楽しそうですよね〜、大いに迷いましたけど、今回のところは眺めのあるほうを選びました。
オーナーさんはマラケシュ郊外にも持ち家があるそうで、モロッコの飾り物があちこちにおいてあります。 なんとなくマラケシュが追っかけてきたみたいで、ちょっとフクザツ…
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小さな台所スペース。
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夜はちと寒いシャワー室。 かんたんな掃除道具がおいてあり、部屋をあけわたす前に自分で掃除する決まりになっています。
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ソファベッドも使えば、四人まで泊れるようになっています。寝室はこの白壁のむこうです。 今日はここに座って、一日アランブラの外壁を眺めていました。
昼はあんなに暑かったのに、夜になると寒くて、にゃんと暖房をつけています。 「朝晩の大きな気温差」じたいがおもしろかったりしますね、常春のリマ暮らしが長いと!
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もう一度、アランブラを眺めてから、カーテンをしめることにします。 おやすみなさい!
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今日も上天気!
当初の予定では、グラナダからコルドバくらいは足を伸ばし、ついでにクスコ生まれのインカ・ガルシラソが暮らしたMontillaの町を見に行こうかと思っていました。 しかしつくづく「移動」には疲れましたので、ずっとグラナダにいることに決めました。 (それにグラナダがこう暑いなら、コルドバなんぞに行ったら鉄板焼きにされそうですし…)
ということで、インカ・ガルシラソのお墓参りは、また別の機会に。 でもちょっとだけ外に出てみよう、ということで、今日はグラナダのすぐ南のLecrinの谷へ。
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車窓からの風景。 こういう荒々しく力強い、ごくスペインらしい眺めを、今回はほとんど見ませんでした。 いずれまたほかの地方にもゆっくり行きたいです、グラナダはこじんまりと綺麗で、なんというかあまりスペインらしくはないですから。
あー、ほんとスペインはきりがないです! もし風景がスペインで、気候がリマの4月で、住んでる人がアンデスびとで、ついでにアンデス野菜も手に入るところがあったら、明日にでも移住するのですが!
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郊外の麦畑。ここでも花、花、花… なんだかこの旅行で、五月がすごく好きになりました。
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オリーブの木まで花盛り。
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Niguelas(ニグエラス、ほんとはuの上に点々)にある、古いalmazara(オリーブの搾油工場)を訪問。 15世紀から20世紀初頭まで使われていたそうです。
ニグエラスでは、En Niguelas ni miras ni huelas?とか言うそうです、うっかり見たり香りを嗅いだりすると、風景がきれいで食事もおいしくて帰れなくなるから、とのこと。 とってもスペイン的な郷土自慢。
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これはロバにひかせる搾油機、molino de sangre
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昔はオリーブの搾りかすに熱湯を加え、さらに搾っていたそうで、そのお湯をわかすための炉もそっくりそのまま残っています。
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搾油工場の外の小さな路地でも、春爛漫。
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そのへんの定食屋でお昼。 これは冷たいスープ、salmorejo(水の少ないガスパチョというところ)
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なんだったか忘れた…
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スペインのなんでもないレストランで、ワインとミネラルウォーターとパンが並ぶと、それだけですごく幸せな気分になるのですが、どうしてかなあ。
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豚のカツレツのきのこソース おいしいですが、どうもドイツ料理っぽいな…
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鴨のコンフィ。 おいしいですが、どうもフランス料理っぽいな…
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そしてこちらはリンゴのパイ。
…というわけで、みごとなまでに赤〜黄色だけのメニュー。スペインの国旗みたい。 こういう食事をとると、われわれ日本人が、ふだんいかに緑色な食事をしているかわかります。
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宿六は大好きな(でも体重維持のため滅多に手を出さない)arroz con lecheがあって大満足。 ペルー人はやはり、モロッコとスペインの遠縁の子孫たちですね。
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近くのBeznarの湖。柑橘類の栽培で有名なよし。 たしかにまわりはレモンやオレンジの木でいっぱいです。
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遠くに白い村が見えます。いいところですね。 このへんもじっくり歩けば、いくらでも見るものがありそうです。
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左の白い町の、教会の時計台。 ふたつの時計の時差がすごくて、イベリア航空便のhora programada/hora estimadaを思い出してしまった…
アンデスも以前はこういう時計台がよくありましたが、さいきん優等生すぎてちょっとつまんなくなりました。
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地中海へ向かって一直線の幹線道路わきも、花、花、花。
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グラナダ市内を走りぬけるお姉さんのヘルメットも花盛り。
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お花畑の中の黒牛。 OSBORNEの黒牛グッズのひとつなのか、それともじぶんでデコったのかな?
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とにかく一日が長いので、夕方6時半にまた宿を這いだします。 近くの坂道をのぼりつめたところには、PESO DE HARINA(小麦粉の重み)というおもしろい地名がついており、それはむかし坂の上にパン屋があって、小麦粉袋を担ぎ上げるのに苦労したからだそうです。
その坂を気分良くぷらぷらと下り、Palacio de los Cordovaのごりっぱな庭を拝見。 アランブラを借景にしている、なんともうらやましいお庭です。
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もう初夏ですね、緑の勢いがすばらしいです。 こういう『秘密の花園』めいた一角、庭に作ってみたいな。
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ざくろも満開。
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まだとうぶん明るいので、散歩をつづけることにして、Darro川沿いにアランブラを見上げながら歩きます。
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Darro川の水を猫たちが飲んでいます。 この川の水はSierra Nevadaから来ているのかな、だとしたらおいしいでしょうね。 宿の水道水もおいしいので、そのまま使っていますが、ぜんぜん大丈夫です。
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「夕方」9時。 ゴヤのタペストリーの下絵にでもありそうな、輝く雲。
勢いで新市街まで歩いて、デパートのEl Corte Inglesをのぞき、会社へのお土産のお菓子を買いました。 次に出社したら辞めるだけですが、まっ、お別れのしるしに、ということで。
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9時半に宿へ戻ると、ちょうど夕焼け。
隣室の若いフランス人家族は、いつ見ても宿のテラスでくつろいでいて、外出するようすがなく、食事もパンとワインにサラミなど齧って済ませているようです。 うまく節約しながら、たぶん一ヶ月くらいここでのんびりするのでしょうね。
私たちが提げているEl Corte Inglesの袋を見ると、目の色変えてどこにあるのか聞いてきました。 (めずらしくちゃんとスペイン語を話そうとするフランス人です、たぶんパリじゃなくて地方の人なのでしょう) タクシーでも数ユーロで行けると説明すると、大喜び。赤ん坊のミルクに困っていたそうです。
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刻々と変わる、空とアランブラ外壁の色。
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きょうは雲があるので、きのうより豪華な夕暮れです。
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明るいけれど、もう夜の9時半。 昼がこう長いと、つい夜更かしをしてしまうので、気をつけなくては。
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今夜は、街の果物屋さんで買ってきた、枇杷とあんずを味見してから休みます。 旅はつづく。
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