私はいわゆる虫好きでは、まったくありません(どちらかというと、見るだけで背すじが寒くなるほうです)。 ただ、なにぶんペルーは蝶の宝庫ですから、「装飾品としての蝶の翅」に、ここ数年すこし興味を持つようになっただけです。
なので今年メキシコで、越冬中のモナルカ蝶(オオカバマダラ、Danaus plexippus)を見ることができたのも、まったくの偶然でした。 仕事で泊ったホテルに置かれていたガイドブックに、モナルカ蝶が数行紹介されているのを見、ちょうど今が季節らしいから…と、さほど期待もせずに行ってみたのです。
ペルーで蝶をたくさん見ようと思ったら、どうしても密林地方に行く必要があり、蒸し暑いところが苦手な私は二の足を踏んでいます。 でもモナルカ蝶の場合は、メキシコ市内からあんなに近いところで、ああも楽をしながら大群を見ることができるなんて…… 今年いちばん驚いた出来事だったかもしれません。
モナルカ蝶(オオカバマダラ)は、鮮やかな黒と橙色の、開長(翅をひろげた蝶の幅)が10センチほどの、なかなか見栄えのする蝶です。 渡り鳥のように旅することで知られており、北米、南米、東南アジアなどに広く分布するほか、風に乗って迷蝶となり、ヨーロッパやカナリア諸島、オーストラリア、日本といった、とんでもない場所で見つかることもあるそうです。 (着々と世界制覇の途上にある…のかもしれませんね?)
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<春から夏にかけてのモナルカ蝶> (繁殖のため北上する蝶たち)
(ここでは、北米ロッキー山脈の東側に生息し、メキシコまで長距離の渡りをするモナルカ蝶について、ガイドさんのお話や旅行書、専門サイト(http://www.monarchwatch.org/)を参考にまとめてみました)
3月下旬、メキシコの越冬地で交尾を始めたモナルカ蝶は、幼虫の餌となるmilkweed(トウワタ)を求めて、三々五々(あまり大きな群れは作らず)北上を開始、合衆国南部で産卵します。 そして、昨年秋に成虫になってから8〜9カ月という、蝶としては非常に長い命を、ついにそこで終えます。
その後子孫たちは、徐々にカナダ方面へと北上しながら、卵(3,4日)→幼虫(約2週間)→蛹(約2週間)→成虫(約2〜5週間)という、ふつうの蝶々と同じ短いサイクルを、三代から四代にわたって繰り返します。
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<秋から冬、春にかけてのモナルカ蝶> (越冬のため南下する蝶たち)
ところが、8月末から9月にかけて、カナダ方面で羽化するモナルカ蝶は、ふたたび長距離の渡りをすることを運命づけられた世代です。
この蝶たちは、成虫になっても、来春までは交尾をしません。 そして秋の寒さに追われるように、数百頭の集団で飛び立ち、途中花の蜜を吸って、できるだけ栄養を体に蓄えながら徐々に南下を続け、11月ごろメキシコ中部の、標高3000メートル前後の越冬地に辿り着きます。
(毎年秋に生まれる新しい世代が、どうやって数代前に父祖たちが越冬した場所、それも多くの場合「まったく同じ木」を見つけるのかは、謎だそうです)
蝶たちは冬のあいだ、越冬地でおとなしく過ごし、翌年暖かくなるとやっと交尾を始めます。 そして3月第2週ごろ、ふたたび北への旅に飛び立ち、左記のサイクルを繰り返します。
つまり秋生まれのモナルカ蝶は(主に雌たちは)、一生のあいだに北米→メキシコ中部→合衆国南部、というたいへん長い旅をするわけです。
私が見たのは、ちょうどこの蝶たちが北上の旅を始める直前の、越冬地のようすでした。
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3月4日、朝8時。ホテルで紹介してもらったガイドのセルヒオ君の、快適な日本車で出発。 渋滞のメキシコシティを抜けるのにちょっと時間がかかりましたが、そのあとはすいすい走って、まもなく松林の広がる郊外へ。
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11時、モナルカ蝶の越冬地のひとつに到着。 駐車場にも、ちらほらとモナルカ蝶が飛んでいます! もういつ蝶たちが北に帰ってもおかしくない時期なので、少し心配でしたが、幸いまだ残っているようです。
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蝶が集まる谷までは、徒歩または馬で行きます。 迷わず馬を選択…… 背の低い、薄茶のかわいいRAYO号にしました。
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涼しい松林の中をしばらく登ってゆきます。馬のうしろには土埃がもうもうとあがります。 馬上から写したのでブレております。
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馬をおりると、今度は徒歩で、少し谷のほうへ降りてゆきます。
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アンデスのニュクチュ(サルビアの仲間)そっくりな花が咲いています。
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道沿いには、モナルカ蝶の翅がたくさん落ちています。 見るのは初めてですが、実にきれいな色ですね。 和名のオオカバマダラというのは、大きな樺(蒲)色(渋いオレンジ色)のマダラ蝶、という意味なんでしょうね、きっと。
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ややあって、見通しのよいところに出ました。 「さあ、ここがモナルカ蝶の越冬地です!」と言われたものの… たしかに空には少し蝶が舞っており、また、さわさわさわ…というかすかな音が聞こえるのですが、どこに蝶がいるのかわかりません。
「向こうの背の高い木、うっすらオレンジ色に見えるでしょう、あれがぜんぶ蝶ですよ!」 え、え、え? どこどこ?
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望遠レンズでのぞくと、遠目には枯れ葉にしか見えなかった一枚一枚が、ぜんぶ蝶らしいことがわかります!
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これはこれは………
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蝶が好んでとまるのは、オジャメル oyamel という、メキシコ原産のモミの一種です。 針状の葉に、蝶たちがちょこんとぶらさがるので、こんな大混雑になりうるわけです。 互いにふれあうほど集まることで、冬の寒さから身を守るのだそうです。
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「ここでは蝶はみな、ふつう木にとまって静かにしていて、あんまり飛ばないんですよ」と馬追いのお兄さん。
いえ私には、じゅうぶんたくさん飛んでいるように見えるのですが… こんなに蝶が空を舞っているのを見たことは、今まで一度もありません。
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保護されているせいか、蝶たちは人のそばまで平気で飛んできて、あちこちで交尾しています。 北へ向けての出発の時が、ほんとうにすぐそこまで来ているのでしょう。
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ガイドのセルヒオ君の腕に、ふわりととまった蝶。 翅の橙色がやや鈍く、黒い翅脈もぼんやりとして太いので、これは雌のようです。
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より鮮やかな橙色の雄は、翅の色を見せびらかすように木にとまり、雌の注意を惹くのだそうです。
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正午になって、日射しが急に強くなってきます。 渋い蒲色の翅は、日を受けると鮮やかなオレンジ色に輝きます。
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でも人間は、涼しい林の中から見物するのですから、実に快適です。
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遠足の子供たちがやってきました。 蝶を見て、思わず歓声があがるのを、先生が何度も何度も押しとどめます。
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せっかくなら蝶が一気に飛び立ってくれないか…と、期待をこめて、みんなで息を殺して待ち続けます。 谷底のほうからは、鉦を高らかに連打するような、不思議な鳥の声も響いてきます。いいところですねえ。
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モナルカ蝶は、翅の裏側の、淡い色もきれいです。
…蝶のどっちが表でどっちが裏なのか、私は今日まで知りませんでしたが、背中側が表翅で、脚のある側が裏翅なんだそうです。 (蝶にしてみれば、それだって人間が勝手に言ってるだけのことでしょうけれど)
横から見える、胸部の水玉模様も実に気がきいています。
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左がモナルカ蝶の表翅、右が裏翅の色(雄)。 つまり、翅をぴたっと閉じてとまっていると、枯れ葉めいた色ですが、翅を開くと鮮やかなオレンジ色が見える、というわけです。
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鮮やかなオレンジ色は、捕食者に対する、「私には毒がありますよ」という警告の意味もある由。
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日に透かすと、オジャメルの枝の繊細さがよくわかります。
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「蝶の重み」!で、オジャメルの枝が折れることもあるそうですが、さもありなん。
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ほかの木にとまったり、花の蜜を吸っている蝶もいます。
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……と、急に蝶たちが、一斉に飛び始めたようです。
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さらさらと水が流れるようなふしぎな音も、一気に高まります。そうかあれは、蝶たちの「羽音」だったのですね!
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こうして日に透かすと、上下の翅の色の違いがよくわかります 小さな蝶型のステンドグラスが、無数に舞い飛んでいるようです。
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だんだんすごいことになってきました…
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もはや声もなし…
馬を引いてきてくれた青年が、「あんまりこんな風には飛ばないのに、今日は珍しいなあ〜」とつぶやきます。 でもセルヒオ君の説では、「今年はもうだいぶ暑くなったので、越冬組の一部はすでに出発したのかも。それでみんな、こんなに活気づいているのかもしれませんね」とのこと。
じっさい今年(2011年)は、全体にやや早めに季節が移りかわっているそうです。 まだ乾季のはずなのに、私たちがメキシコに来る数日前にも、大雨が降ったといいますし。(そのおかげで、メキシコシティ名物の大気汚染は、あまり感じないですみました)。
ところで、モナルカ蝶が越冬地に着くのは、ちょうど11月はじめの「諸聖人の日」「死者の日」前後にあたるので、かつてメキシコの人々は、モナルカ蝶をご先祖の魂と考えていたそうです。 蝶は一頭でもこの世ならぬ軽やかさがありますが、これだけの数が集まるとなおのこと神秘的です。
メキシコでもペルーでも、蝶と人の魂を結びつける考え方は、共通しているようです。
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きのう見た、Teotihuacan テオティワカン(紀元前100年ごろから紀元後700年ごろまで)の遺構のひとつTepantitlaを飾る、El Tlalocan(水の神トラロックの天国)と呼ばれている壁画。
水死した人が行く天国、農業にまつわる祭儀、もしくはテオティワカンの日常生活…と諸説あるようですが、楽しそうな人々のあいだで、蝶がたくさん舞っているのが目につきます。
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大きな目の、愛嬌のある蝶です。
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また、そのテオティワカンで大量生産されていたのが、蝶の神 dios mariposa への儀式で使う香炉です。 (写真は香炉のふたの部分。ティオティワカン出土、Museo nacional de antropologia蔵)
いちばん下に、粘土版の大きな蝶が飾ってあり、また中央の人物は、蝶を模式化した飾りを鼻の下につけています。
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こちらは、香炉に貼りつけるため、粘土で作られた蝶々です。右下は、左に出てきた蝶の鼻飾り。 (これもティオティワカン出土、Museo nacional de antropologia蔵)
姿を次々と変えながら生きる不思議な蝶に、命の再生への願いをこめたのでしょうか??
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この日、「一生のあいだに見た蝶の総数」が、突如莫大な数字になりました…… さほど大きな期待も抱かず、予備知識もなしに来ただけに、いっそうの感動です。
帰宅後、遅ればせながら「蝶写真の撮り方」など調べて、なるほどなあと思いましたが、今回はたとえそれを知っていても、あまり関係なかったかも…… ただただ数に圧倒されて、ズームレンズにふりまわされつつ、無数のピンボケ写真を撮ってきましたが、日射しを受けた翅の鮮やかさと群舞のみごとさは、しっかり目に焼き付いていますから、それでじゅうぶんです。
でもまた機会があったら、今度はマクロレンズくらいはちゃんと持参して、泊まりがけで見にいきたいです。 もしこの越冬地がうちの近所だったら、それはもう毎年通ってしまうでしょうね。
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飛び立った蝶たちは、谷底へ水でも飲みにいくのかな?と思ったのですが、やがて日が少し陰ると、風に舞う落ち葉をフィルムの逆回しで見るかのように、ふわふわともとの枝に戻ってゆきます。 そして雲が動いて日が射すと、また一斉に飛び立ちます。
おかげで短いあいだに、蝶の大飛翔を三度ほど見ることができました。 これだけでも、赤道を越えてメキシコまで来た甲斐、じゅうぶんあります。
非常〜に立ち去り難かったですが、セルヒオ君と馬引きさんに促されるので、しかたなく帰ることにします。
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乾いた地面に、落ち葉といっしょに文字通りふりつもっているモナルカ蝶。 やはり雄がほとんどのようです。雌たちはこれから北上して、卵をうまないとなりませんから…
枯れ葉のように清潔で、ふつうの蝶みたいに燐粉が手についたりもしないので、なんの気なしに数枚の翅を拾って持ち帰りましたが、考えてみると保護区ですから、ほんとうは良くなかったかもしれません。 反省しております、もうしません。
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昼の日光が差し込む松林。 ふたたび馬で、おっかなびっくり戻ってゆきます。
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乾季なので林は乾いていますが、それでも少し花が咲いていました。
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あの蝶々の感動のあとでは、誰も目もくれようともしなかったけど、花もなかなかきれいです。
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徒歩の小学生たちが、「お馬さんだ!いいなーいいなー」と大騒ぎ。 私も小学校のころは、さんっざん歩かされたんだからね、君たちもそのうちご老体になったら馬に乗りなさいね。
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車に戻ったのは午後2時ごろ。 嬉しいことに、道路に出ても、まだたくさんの蝶が飛んでいます。 ふわふわと車窓をかすめて、気持ち良さそうに飛びかうので、見送ってもらっているような気がします。
この蝶たちを気遣ってか、車はみな静かに徐行してゆきます。 幼い子供が道端にいても、おかまいなしですっとばすリマの四駆乗り諸氏とは、ずいぶんちがいますね。 こういうところに現れる文化度というのは、やはりメキシコとペルーとでは、ずいぶん差があるようです。
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昼食は近くの VALLE DEL BRAVO にて。 湖に面したこじんまりとした集落で、ここでもモナルカ蝶がふわふわ飛んでいます。 よく日が照って、少し暑いくらいです。
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湖畔のレストランへ。 たくさんのオレンジジュースと、虹鱒の唐辛子焼きを注文しました。
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メキシコでは、このハラペーニョは別として、大抵の唐辛子ソースは加熱したもののようです。 なのでペルーのものとは風味が違いますが、とりあえず唐辛子さえあれば何でもおいしくなりますからね。 おかげでメキシコでは、どこに入っても一応安心でした。
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宿六は海老入りごはん。
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ガイドのセルヒオ君が注文したのはfritos。 見たところ、要はトルティーリャのようですが、さらにごはんもついてきます。 炭水化物が大好きなのは、メキシコもペルーも同じですね。
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セルヒオ君に教えてもらった、紙幣の中のモナルカ蝶。 左下のすかしは、モナルカ蝶のさなぎの形です。
ガイドのセルヒオ君は、2011年現在32歳という若さながら、カナダやアルゼンチンでの仕事経験もあるためか、視野の広いしっかりした青年です。 私たちはティオティワカン遺跡とモナルカ蝶と、二日間お世話になりましたが、たいへん良い印象を受けました。次回メキシコに行くときも、必ず連絡しようと思っています。
メキシコでの、英語またはスペイン語の個人ガイドをお探しの方、ご参考まで!
<セルヒオ君の連絡先>
氏名 Sergio Velasco セルヒオ・ベラスコ メールアドレス hsvelascof@yahoo.com.mx webサイト http://chekitotours.jimdo.com/
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右上のすかしも、ちゃんと蝶の形になっています。
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帰路、メキシコシティに入ったあとで渋滞に巻き込まれましたが、セルヒオ君と喋り倒して楽しくやりすごしました。 「サルマ・ハエックが演じたフリーダ・カーロが英語しゃべってたのは超むかついた!」「まったく同感!」みたいな話をしたり、マリアッチ大好きなセルヒオ君がラジオに合わせて歌ったり。
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巨大なモナルカ蝶をくっつけた観光バスとすれちがいました。
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夜8時半、宿のあるセントロ地区に帰着。 ほんとに楽しい、驚きに満ちた一日でした。 旅はあまり事前に調べすぎないほうが、かえって感動が大きくていい、ということもあるのですねえ〜
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さてこれは、後日メキシコシティの博物館で見た、民芸品作家の手になる「モナルカの木」。 蝶の雌雄が分けられていないのが、ちょっとざんねん。 どうせなら、そこまで作り込んでほしい。
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こちらは、越冬地のお土産屋さんで買った、モナルカ蝶のマグネット。 こんなもの、四十でも五十でも買ってきて、冷蔵庫一面につけたらおもしろかったのですが、そう思いついたのは帰国後でした。しまった……
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マニアックな友人に頼まれ、市内の切手専門店へ行ったら、そこでもモナルカ蝶を発見!
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マニアックな友人に頼まれたのはこちらでした。 ペルーの詩人Cesar Vallejoの、没後50周年記念切手(1988年)の、発行日の消印入り封筒。 しぶいご趣味ですねえ、ホルヘさん。
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さて、悪気なしに拾ってきてしまったモナルカ蝶の翅ですが…
どうせなら有効利用したいと思い、リマに戻ってから、蝶のなんちゃって標本(インテリア標本)を作るお店に持ちこみ、額に入れてもらいました。 腹部や触角は、適当に(ほんとにテキトーに(笑))作ったのを、くっつけてくれました。
自然に落ちた蝶を、ただそっとハンカチにはさんで持ってきただけですが、さすが長距離の渡りをする蝶だけあって、翅がとても丈夫です。 そうでなければ、展翅もせんと、こんなふうに形だけでも標本風にすることはできなかったのでは?と思います。
下の翅にひとつずつ黒ぶちがついているので、これもやはり雄です。 新婚旅行先のメキシコで、お役目を終えて、はらりと地面に落ちたのですね… なかなか良い最期ではありませんか!
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モナルカ蝶はペルーにもいるらしく、ただ渡りはしないそうです。
ところで、先日たまたま購入した「なんちゃってインテリア標本」に、大きさや形はちがうけれど、色はモナルカそっくりな蝶が入っていました。(写真の左上) 手持ちのわずかな資料にあたってみましたが、種類はわからず。 なんでも「毒のあるモナルカ蝶に擬態して毒があるふりをする蝶」というのもいるんだそうですが、それとも違うようです。
蝶の世界はたいへん奥深そうで、うっかりは踏み込めませんね。 蝶の宝庫(ペルー)で暮らしているのですから、蝶見物旅行をしてみたいような気もするのですが、そうするとやっぱりあのレンズがほしいとか、よけいな煩悩も起きそうですし…
インテリア標本で壁を埋めて、喜んでいるくらいが無難かもしれません。
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モナルカ蝶の残りの翅は、銀細工の店に持ってゆき、ペンダントと指輪に作ってもらいました。 (ペルー製の銀細工を身につけていると、メキシコシティのいろんな人に、「それはわがメキシコが誇る銀製品ですね!」と自慢そうに聞かれ、そのたびに「いえ、すみませんペルーのなんです…」と繰り返しましたが、銀の装飾品については、たしかにペルーのほうがはるかにレベルが高いように感じました。もちろんお店にもよるでしょうけれど)
リマの銀細工店でも、モナルカ蝶の翅のじょうぶさに、職人さんが驚いていました。 ふつう蝶の翅は扱いにくく、なかなか無駄なく利用はできないそうですが、モナルカ蝶の翅は小さく切っても鱗粉が落ちないそうで、思ったよりは多くの装飾品が出来あがってきました。
蝶の翅は色が変わりませんから、これは末永く、私を楽しませ、元気づけてくれそうです。なんといっても、カナダからメキシコまで、確かに旅した蝶の翅なのですから。 指にはめるたびに、日光を集めてオレンジ色に輝いていた、無数の蝶々を思い出します。
なおメキシコのニュースによると、私たちが訪問してから一週間後の3月10日、モナルカ蝶は北へ向けての旅を始めたそうです。 産卵し、そして死を迎えるための、あの蝶たちにとってさいごの旅です。 でも今ごろ(9月末)はまた、何代かのちの子孫が、ふたたび一路メキシコをめざしているはずです!
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