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paco2.jpgアルパカ写真館の、次の部屋へ行く


アンデスの アルパカ写真館(リャマとビクーニャつき)
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2009年2月2日作成


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双頭の仔アルパカ

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泣きぼくろが色っぽいけど、まだ仔アルパカ。

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標高4400メートルに広がる大平原。
アルパカは、こういうところに住んでいます。



 日本のテレビCMの、ちまちまとした情景の中の、真っ白に洗い上げたアルパカちゃん。
 …もちろん、それなりにかわいいです。


 でもせっかくなら、広大なアンデスに生きるアルパカたちの姿も、ぜひご覧頂きたいなと思い、手持ちの写真を集めてみました。

 ペルーに住んでいても、必ずしも年中アルパカを見かけるわけではありませんが、ひとたびアンデス旅行に出かければ、ほうぼうで出会います。
 標高3800メートル以上の高地が、アルパカたちの本来の世界です。



 何時間も人気のない大地をドライブしたあと、大きな大きな景色の中で、人なつっこいアルパカたちに出会うと、なんとなくほっとした気持ちになります。

 アルパカやリャマは、妙に物見高いところのある動物で、長い首をもっと伸ばすようにして、熱心にこちらを見つめます。
 それはとてもかわいい姿です。でもその一方で、犬猫のようには、意志の疎通はできそうにないな…と感じさせる、適度な不気味さもあります。


 また、遠くから眺めるぶんには心配ありませんが、かわいいアルパカとて、やはりラクダ科動物… つまり反芻動物です。
 必殺つば吐きには、じゅうぶん警戒しつつ、向かい会う必要があります。
 (追記:la cosmopolitaさんが思い出させてくださいました、アルパカやリャマは、「げっぷ」にも要注意です!)


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ペルー南部・ワンカベリカとアヤクーチョとの県境、アパチェタ峠(標高4460メートル)近くの眺め。
この標高にして、この豊かな緑… だからこそアンデス高地では、アルパカの放牧ができるのです。


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 さっそくアルパカ発見。
 染色に都合がいいため、いちばん多く飼われているのは白アルパカですが、本来はこんなふうに色とりどりです。
 白、クリーム色から薄茶、焦げ茶、灰色に黒と、22もの色があるそうです。


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まだ幼い仔アルパカ。

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 アルパカは野生動物ではありません。
 4000年ほど前に、アンデスの人々が野生のラクダ科動物を家畜化した結果、今のような色とりどりの動物となったそうです。


 アルパカたちは、昼間はこうして、思い思いの場所で草を食んでいますが、夕方になると牧童と犬によって集められ、安全な囲いに戻されます。

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 アルパカは、家畜とはいえ、やはりこういう大自然の中にいてこそ、だと思います。
 表情はあくまでラクダだし、都会的な芸のある動物でもないですから、白犬ほどにはブレークしないんじゃないかな〜? ああいう作り声で、なにか喋るわけでもないですしねえ。


 ただ、雨季(繁殖期)のアルパカは、ムームームー…と甘い声で歌をうたい(ほんとです!)、それはとても可憐な姿です。

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アルパカの様子を見守る少年。

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全部アルパカ。

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 なぜかアンデスというと、「寒風吹きすさぶ、荒涼たる大地」というのが、ほとんど決まり文句となっていますよね。

 でもたぶんそれは、ほとんどの方が、すべてが枯れ果てる乾季の7月・8月に、ペルー観光旅行にみえるせいでしょう。
 (もちろん7月・8月のアンデスにも、雨季とは別の美しさ ―こわいような星空や金色の平原、みごとな雪山などなど― があるわけですが)。


 雨季のアンデスは、こうして一面、緑に染まります。
 昼間はさんさんと日が射して、標高4000メートル「程度」なら、じゅうぶん暖かく感じます。


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 斜面でくつろぐ母子アルパカ。
 緑が多い、つまり食べ物が多い雨季(12〜3月ごろ)が、アルパカの繁殖期です。

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 アルパカは一頭ずつ生まれるので、この二頭、きょうだいではありえませんが、きっと同じころに生まれたのでしょうね。
 やはり同サイズだと気も合うらしく、仲良さそうに連れ立って、そのへんで跳ねていました。


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 アンデス高地の牧民の家。

 家のすぐそばに、石を積んだ、りっぱなアルパカの囲いがあります。
 大きな囲いは、毎晩アルパカたちが眠る場所で、小さな丸い囲いのほうは、毛を刈ったり、繁殖儀礼を行うときに使うそうです。



 さて、こちらはリャマ君です→

 アルパカとリャマは、どちらもラクダ科の家畜です。
 たくさん見れば、自然と見分けがつくようになりますが、ざっとポイントをご説明すると…


☆大きくて筋っぽくて、耳が長くてアンテナめいているのがリャマ
 全体になんとなく、男性的な印象。(つまり、より沙漠のラクダに近い外見)

  首を入れない、背中までの高さ:平均115cm
  体重:80〜110s


☆リャマより小ぶりで丸々としていて、ふさふさ前髪をたらし、おしりに魅力があるのがアルパカ
 全体になんとなく、女性的な印象。(つまり、より羊に近い外見)

  背中までの高さ:平均90p
  体重:平均80s



 ただ混血もよくいて(リャマ♂・アルパカ♀の仔はhuarizo、アルパカ♂・リャマ♀の仔はmishtiと呼ばれます)、どう眺めても判断がつかないことも、しばしばです。
 アルパカがリャマとまざってしまうと、毛の商品価値が落ちるため、さいきんは間違いが起きないよう、きちっと分けて飼うことが多いようですが。


 商品としてはアルパカ毛が有名ですが、リャマも小さいうちは毛質がやわらかいので、ベイビーアルパカのみならず、「ベイビーリャマ・セーター」なんていうのも、お土産屋さんで見かけます。

 アンデスの山奥で作られている、アルパカのさまざまな毛色をそのまま生かしたポンチョや毛布も、風情があってとても良いものです。
 当然ながら、いくら洗ったところで色落ちの心配もありません。


 リャマは昔から荷駄獣として利用され、その習慣は今もアンデスに残っています。 また毛はもちろん、皮や骨もさまざまに利用でき、肉は干して保存食とします。
 (なので私は勝手に、「アンデスの鮭」と呼んでます)


 アルパカは主に、毛の採取のために飼われてきましたが、さいきん食肉としても注目されています。
 料理しやすい、ごく上品な赤身肉で、しかもコレステロールがとても低いのですよね。
 あのかわいい顔を思い出してしまうと、ちょっと食べられませんが、でも確かにおいしいお肉です。合掌。


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おしゃれな迷彩カラーのリャマ君。

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↑インカ期のリャマの囲いのあと。
アレキーパ県、プエルト・インカにて (ナスカの南約150キロ地点)


 かつてプエルト・インカ(「インカの港」の意)では、魚を塩漬けにし、クスコなどアンデス山中の支配者たちのもとへ、送り出していたそうです。
 この石囲いは、塩漬け魚の運び手の、たくさんのリャマたちの休憩場所だったのでしょう。


 ここに写っているだけでも、大小四つの囲いがあります。(水色の矢印のところ)
 今ではリャマは、アルパカ同様、ふつうは標高3800メートル以上のところに住んでいますが(観光業に従事するリャマ君は除く)、かつては海岸部でもたくさん飼われていたそうです。その証拠に、ペルーの海辺の遺跡からは、よくリャマの骨や皮が出土します。


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雪山の前でポーズをとる、ぶちリャマ君。
実に思い切った模様のリャマが多いので、眺めるのが楽しいです。


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お母さん似の、かわいい色黒の仔リャマ。
お母さんのリボンもおしゃれ。


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水たまりの幅を目測する、ガングロ(死語の世界)アルパカ。
このあと軽々と飛び越えました。


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 さてこちらは、ペルー南部アヤクーチョのお祭に参加せんと、盛装して広場に乗り込むリャマたち。

 首には大きなベルがついていて、リャマの早い足取りにあわせ、カランコロンと華やかに鳴ります。
 聖週間(3月〜4月に巡ってくる移動祝祭日)の、昔ながらの慣わしです。

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 リャマは荷駄獣とはいえ、運べるのは、一頭につきせいぜい45キロまでだとか。
 それも左右バランスよく、振り分け荷物にしなくてはなりません。
 そこはそれラクダ科動物ですから、ひとたびご機嫌を損ねると、座り込んで動かなくなってしまうそうです。
 だから飼い主も、逆効果になる手荒なまねは、決してしないようです。


 このリャマ君は、まだ若いからでしょうか、おしるし程度の荷しか載せていません。お祭には参加することに意義がある!…というとこですね。

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愛想よく記念撮影に応じるリャマ。
実のところ、ヒトにとっては、なかなかリスキーな行為なのですが……

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広場で荷物をおろしてもらって、一息つくリャマたち。
持ってきたのはレタマ(エニシダ)の枝で、「復活の主日」(復活祭)の前夜、これで焚き火をするのです。


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 同じラクダ科動物でも、アルパカは「つぶらな瞳…」という印象なのに、リャマだと「ちょっとあぶない眼差し…」と感じてしまうのは、なぜでしょう???

 リャマとアルパカは、実際のところ、ほとんど同じ顔立ちと思うのですが、たぶん前髪の有無が、印象を大きく左右してるのですね。やはり髪型って大切だわ…

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 ややっ、これはもっとあぶないかも! 薄青の瞳のリャマ君。
 グリンゴ、あるいはサルコ(どちらも「青い目の白人」の意)と呼ばれています。


 注意してみていると、リャマやアルパカの瞳の色は、実にさまざまです。
 こういう薄色の場合、気の毒に、なみだ目になりがちだそうです。サングラスでもかけてやりたいですね。


 聖週間が終り、アヤクーチョからリマまで車で戻りました。

 標高4000メートル以上の地点が、何時間も続くので、NHKで紹介されて有名になった珍しいプーヤ・ライモンディなぞも、道端にタンポポのごとくさりげなく、あちこちに生えています。

 写真では小さく見えますが、下の葉の部分が3メートル、その上の花茎は10メートルまで育つこともあるという、巨大な植物です。


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4460メートルの峠を越えると、雪景色でした。


 赤道にほど近いペルー・アンデスでは、4000メートル「程度」のところでは、雪はそう多くは降りません。また降ったとしても、風に飛ばされてしまうので、積もることもあまりありません。

 したがって、チェーンなど最初から持っていませんから、用心しいしい徐行してゆくと、前方にすばらしい光景が!!↓

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おお、これは!!
山奥でないとなかなかお目にかかれない、リャマ・アルパカ・羊の混成部隊です!
(山羊もまざっていたかも)


 あまりの嬉しさに、おろおろしながら撮ったので、ちょっとブレてますね。
 リャマ・アルパカと羊は、本来まったく無縁の動物なのに、ふしぎと折り合いが良いそうです。


 当地では長いこと、染めやすい純白の毛を持つアルパカだけが、選別され、殖やされてきました。
 そのため、アンデスを旅行していちばん多く見かけるのは、白アルパカだけの群れです。
 (近年、アルパカの天然22色への需要も、だんだん増えてきているようではありますが)


 また、もしリャマと混血すると、毛の質が落ちるため(毛がぐっと太くなってしまうそうです)、別々に飼うことが勧められています。
 でも、こういう昔ながら(*)の飼い方は、眺めるだけのこちらにとっては、はるかに楽しいですね。


(*:この場合、「昔」といっても、植民地時代までしか遡りません。
 インカ期およびそれ以前には、アルパカとリャマはちゃんと分けて飼育されていたようです。
 そのせっかくのシステムをぶちこわし、ペルーアンデスのアルパカの毛質を、全体的に落とす結果を招いたのは、例によって例のごとく、侵入してきたスペイン人たちの仕業だったようです…)


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凍てつく薄い空気の中、背にうっすら雪をのせ、でも涼しい顔して、黙々と歩いてゆきます。
全員、上等なコートを着ていて、なによりです!


手前はリャマで、奥のほうには、畳イワシ状態のアルパカたちがいます。
…な、なんだか、大勢の視線を感じます〜


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リャマ組。


 牧民たちは、リャマやアルパカの色模様を、たとえば靴下やえりまきに見立てて、上手に記憶するので、自分の動物たちのことは、一頭残らず見分けることができるそうです。

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こちらはアルパカ組。


 うしろからやってくるのは、アルパカのポンチョを着込み、白馬にまたがった、かっこいいお父さん。
 笑いながら、大きな声で、「写真撮れ撮れ、もっと撮れ!」と私に言いました。


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道を渡るアルパカ・リャマ・羊の混成部隊。


 有能な犬に導かれ、あわてず騒がず渡るので、なかなか終りそうにありません。



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…やっと終りが見えてきました。


 あたりの空気は、冷え冷えと澄みきっていました。零度近かったろうと思います。
 震えるほど寒いのに、じんわりと温かな気持ちになる情景でした。



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